top of page

時計を止めて……

  • 悠冴紀
  • 2016年4月20日
  • 読了時間: 2分

音もなく降りしきる霧雨に 大気が霞み 近くにあるものさえ 遠く感じる 世界があなたを 失ったからだろうか あなたを想う人の数だけ 止まってしまった時計がある あなたが旅立ったあとも 時間は無慈悲に流れ続け 何事もなかったかのように 多くの人々を押し流していく けれど あなたを愛した人たちは 彼等の中の時間を止める あなたをこれからも想い続けるため その余韻を少しでも長く続かせるため あえて少しの間 歩くのをやめる あなたの歩んだ大地で その足跡をたどり あなたの見つめた彼方に その残像を追う 蜃気楼のような透過性で浮かび上がる あなたのすべてを 振り返らずにはいられない あなたと触れ合った人たちが、今 閉ざした瞼の裏側で あなたの輪郭をなぞっている いつかは再び歩き出さねばならない現実を前に 私たちは それでもやがて 一つの道を見いだすだろう 周囲の時間枠に囚われない別なところに あなたのためだけのスペースを作り あなたと共に在り続ける道を 朽ちることのない内なる場所で いつまでも あなたを想い続ける 時計の針をあえて止めて いつまでも いつまでも 残し続ける あなたが奏でた 恍惚とした命の調べが いつまでもずっと 消えないように

************

※2014年8月作。 ベルさんに捧ぐ。 注)この作品を一部でも引用・転載する場合は、必ず『詩「時計を止めて……」悠冴紀作より』と

  明記してください。自分の作品であるかのように公開するのは、著作権の侵害に当たります。


最新記事

すべて表示
詩 『答 え』

終局を迎え 落ちた木の葉は 残像だけをおいて土にかえる 土を踏みしめる誰かが樹を見上げるとき そこには また新たなる木の葉 ループで 螺旋らせんで ゴールはない

 
 
詩『ドッペルゲンガーの掟』

作:悠冴紀 互いの存在を知りながらも 近付きすぎてはならない間柄がある 一つの世界には 一人の自分 同時に二人は存在できない 掟を軽んじてはならない もう一人の発見に歓喜しても 会うことを望むのは禁忌に当たる 会っては互いに破滅する 何度かの失敗体験をもとに 私は距離の取り方を学習した 突き放したのは嫌悪ではない 君がもう一人の私だからだ 残念だが私たちは 最も慎重に距離を取らねばならない間柄 安

 
 
 

コメント


© 悠冴紀  ※リンク・フリーです。

       ただし、私の文章を一部でも引用・転載する場合は、

       「悠冴紀著『◎◎◎(←作品名やHPのタイトル)』より」と明記してください。

        自分の言葉であるかのように配信・公開するのは、著作権の侵害に当たります。

bottom of page